砂漠からマラケシュに戻るの巻

サハラを出て、ひたすらマラケシュに向かう。

皆疲れ果て、ぐったりと座席に沈むように座っている。

途中でフェズに行く人たちがバスを降りて行った。

いきなりがらんどうになるバス車内、と思ったらまた新しく3人乗ってきた。どこから来たのだろう、砂漠ツアーの時は見かけなかった顔たち。

昨日の夜はあんなに凍えていたのに、今は裸になりたいくらい暑い。一番後ろに乗っていたので、誰も見ないだろうとタンクトップ一枚になる。

落としきったと思っていた砂はどこからともなく流れ出てくる。

ポケットに手を突っ込めば、爪と指の間に挟まるサハラのかけら。砂漠に行ったこと、もう正直夢の中の出来事みたいだった。

バスでの移動中は、友達が興奮気味に砂丘を登りきったことをなんども語る。

私はそれを片耳に窓の外を眺める。

岩と砂の光景がひたすら続く、時々人々がすむ街を通り過ぎる。

お、と思ってカメラを構えても一瞬で過ぎ去って行くほんとうに小さい街。

友達はまた頂上から見た景色の素晴らしさを語る、登りきれなかった悔しい思い出にまた火がつき始める。

しかし、友達はずっと私に窓ぎわの席を座らせてくれたので

いいヤツだ。

朝から晩までずっとバスの中。

途中で何度か休憩を挟む。

バスの運転手はタイガーウッズに似たモロッコ人だ。

オレンジジュースを飲んでいたら、そっと近づいて来て

『あと10分で出ます』とだけ言う。

彼はモロッコ旅行中に出会ったモロッコ人の中で一番頼りになる、信頼できる人物だった。

目が違った。

運転中は常にサングラスをかけていたんだけど、時々のぞく瞳がとても頼もしかったのです。

とうとう20時を過ぎた、夕焼けのあとに真っ暗な夜がやってくる。

私にはまだ不安があった、

マラケシュに着いてから、この重いスーツケースを持ってリヤドまで自力で歩いていかなければならないのだ。

地図はすでにGoogleマップのものをダウンロードしていた。

バッテリーはあと30パーセント…モバイルバッテリーを実はドイツに忘れて来ていた。

広場で降ろされ、他のツアー参加者との別れもそこそこに

リヤドに向かって一直線に歩き出す。

人、バイク、車の間を縫うようにしてスーツケースを左手に、スマホを右手にひたすら進む。

とにかく前だけ見て、「道はわかっています」といった表情をしていたので特にめんどくさい絡みなどはなかった。

誰にも道案内させる隙を与えないよう、とそればかり考えていた。

メディナの中にリヤドはあった、一度通り過ぎてしまって、また地図を見ながら引き返すと少年が待ち伏せていた。

『〜〜リヤドに行きたいのか?』

悪いけど、無視をする。彼は諦めない、ずっと付いてくる。

道案内をしてくれたと思ったらチップを要求してくることもあると聞いていたので、彼の英語が聞き取れないふりをした。

「あの子、めっちゃ怒ってたよ」と後ろから妹が言ってくる。

リヤドに着いた。

宿のお兄さんはとても親切で、リヤドの屋上を私たちに見せたときも彼が一番嬉しそうな顔をした。

ミントティーを飲みながら、汗が引いていくのを感じる。

夕ご飯は近くの大衆食堂に。

もう遅かったので、開いているレストランも少ない。

砂漠の前に行った大衆食堂に二度目の訪問。

ここにきて、自分が好きなタジンはケフタ(ひき肉、卵のせ)だなとわかってくる。

他の牛肉のタジンやラムのタジンは野菜がたくさん入っていたりするのだが、このケフタのトマトソースに実はハマっていた。(当時は言えなかった、友達も妹もタジンがお気に召さなかったようなので)

猫はどこにでもいる。

23時半にもなるとメディナはどこも店じまい。道路に水が撒かれ、人もほとんどいなくなる。

フナ広場だけが明るく、賑やかだった。

オレンジジュース美味しい。ぼられることもなかった。
モロッコの猫は死んだように眠る。

疲れはて、自分が砂になってドサァッ〜と流れていくようだった。

今日はあたたかいベッドに安心し、砂になって眠る。

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