町の窯探し

(前編はこちら)

一通り花瓶を作り終えたら1週間乾燥させて第一次焼成(Schrühbrand)にもっていく。大学の窯はしまっているので、町の陶芸工房で焼いてもらうことになる。

ベルリンには意外とあちこちに陶芸工房が存在しているのはインターン探しの時に知った。(Keramik  Werkstatt Berlin とかで検索してみてください)

大体の陶芸工房は自分たちの作品を作っているだけでなく、ワークショップを開いたり、工房の一部スペースを貸し出したり、持ち込み作品の焼成(Brennservice)なんかもやってくれるみたいだ。

私はひたすらKontaktの欄をクリックしては
「私の作品を焼いてくれませんか?大きさはこんくらいです」とかメールを送っていく。焼く前の作品は一番壊れやすいのであんまり遠い工房には行きたくないのだが、仕方ない、返事が来るまでいろんな工房にぽちぽちメッセージを書く。

一つ二つくらいの工房から返事があり、作品をもっていくことにした。どっちもうちから1時間かかるハハハ…

てかどうやって作品を持ち運べばいいんだろう、正直窯に入れるまで触りたくもないんだけど。部屋を探していたら手軽な小箱を見つけたので、そこに布やチラシなどを敷き詰めて丁寧に作品を詰めていく。

箱に詰めたはいいが、これをトートバックにでも入れたりしたら袋の中でひっくり返って大変なことになるだろう。と、いうことで献上品のように両手で箱を抱えていくスタイルで工房まで向かうことにした。

covid-19 対策で最近は電車のドアも自動で開くようになった(今までは乗り込む時に自分でドアのボタンを押して開閉する必要があった)ので献上スタイルでも難なく乗車できる。

このパンデミックによって本気出せばできたんだね、ってことが目に見えて増えた。今までは私の大学では単位取得のために、いちいち教授にアポを取って直接訪問し紙のノートに彼らのサインと成績を書いてもらっては事務局に提出していた。(毎ゼメ、全ての講義ごとにだ)そんなクソめんどくさいシステムもコロナによって撤廃し、今では教授自ら事務局に学生の単位と出席状況をメールしている。やればできるんかい、

常に自分の前にものを掲げているのはちょいきつかったので途中で床においた(わたしゃ手に何かを持つのが嫌い)、しかし気がきではないので常に床の上の小箱を見つめ続ける。車内が揺れるたび、さっとしゃがんでは布をめくって中にちぢこまる作品の安否を確認した。

着いたみたいだ、小箱をそっと持ち上げて車外に出る。工房の場所は実はよくわかっていない。サイトには『駅出たらすぐ』としか書いていなかった。幸い駅の出口は一つしかないので迷うこともなさそうだ。

駅を出たら、確かに目の前に工房があった。小さい家のような見た目をしていて、屋根のすぐ下にはTöpfereiの看板が吊るされている。まさにこのために駅が建てられたかのように、駅の出口と工房の入り口はまっすぐ横断歩道で繋がれていた。

急にご飯の写真

工房の中に入ると、女性が出てきた。私の母より年上で、私の祖母よりは年下くらいの。それから『ああ、メール書いてきたのあなたでしょ』と言う。頷いて、もってきた陶芸を新聞紙の上に並べる。

『何度で焼くんですか』と聞くと壁に貼ってある紙を指さされた。

Schrühbrand       980
Glattbrand            1100

ちょっと私のもってる釉薬に対してはGlattbrandの温度が高すぎるが、まあものは試しだ。ドイツに売ってる釉薬は耐火温度が低めのものが多い気がする、(他の国のことは知らないので断言できないが)大体1080度とか1050度とかがちょうどいい〜〜感じだ。

陶芸家の彼女が作った大量の陶器が工房の壁一面に並べられている。(こういうのをこっちで見るたびに、地震ないのっていいよなぁと思ってしまう)
紺色の皿やカップに白で草花の模様が描かれたもの、レンガのようなオレンジ陶器に赤の釉をかけた置き物など。正直私の趣味ではなかったので、今こうして書いてみても(何が置いてあったっけ〜ポワンポワンぽわ〜ん)という感じだ、あんまり覚えていない、次行ったときにはもっとちゃんと見よう。

アン(これから陶芸工房の人のことをこう呼びます)は私の陶器の底に釉薬が垂れていないかを一通りチェックしてから『じゃあ、また焼き終わったら連絡するから、じゃね!』と言った。私は内心(え、もう帰っていいの?お金は?)と思ったが声に出ていたようで、アンは『焼き終わってから重さ測って、それで値段を決めるわ、焼いてからの方が軽くなるしね』と微笑んだ。

私には貸し窯システムのことを何も知らないので、このときアンが素晴らしく優しい人に見えた。初めてやって来た、まだ信用できるかもわからない人間が再来することを信じて一銭も受け取らずに家に帰らしてくれる人!!がいるなんて!!

こんな善人がベルリンに….と感動しながら私は帰途についた。(書いてて自らの心のささくれを感じます。そしてベルリンにも優しい人はもちいます。)この後、他の工房も何軒か試してみたけれど、半々くらいは料金後払いだった、こういうものなのかもしれない。

陶芸の完成だけが、ロックダウン中の唯一のこころの支えだったなと今は思う。(まっだロックダウンは続いているけど)

ではでは急ですが今日はここら辺にして、次回は陶芸完成編です。

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