では今回もyukaさんのインタビューの続きです。
M:コミュニケーションデザインを選んだのはなぜですか。
Y:イラストレーションの学科があったからです。ドイツに来たばかりの頃は、私の作品が大学ではアートに入るのかデザインに入るのかで長いこと考えました。例えばFreieKunstは油絵のイメージが強いし、当時はアクリルやインクで描くことが多かったので、違うなと。私が描いてきた絵はイラストレーションに近いなと思ったんですね。
コミックを描きたいな、と思って。
昔から物語を自分で考えて、絵にすることが好きだったんですね。
もし物語性のある作品を作りたいんだとすれば、どちらかというと、アートではなくデザインに入るということがわかりました。
M:漫画ではなくて、コミックが描きたいとなったんですね。
Y:そうですね、漫画にはいろんなルールや縛りがあって閉塞感があるなと思って。それを超えた自由な表現をコミックでしたいと思いました。
また、学生時代からバンド・デシネが好きでヨーロッパコミックを集めたりしていました。ドイツで自分がやりたいことは何だろう、と考えたときに『バンド・デシネがやりたい』と。
M:大学でコミックやイラストレーションを勉強しようと思った理由は何ですか。
Y:ドイツにも私立でコミックを教えてくれる大学はあるんですが、専門的な型にはまったものしか学べないんだろうなと思って。
大学に行けば、イラストを学ぶ人以外にもデザインや絵画を学ぶ学生がたくさんいるわけで、その人たちと交流していけばもっと表現の幅も広がるし、刺激にもなると思いました。
美大に行くか、アーティストになるか
M:なるほど、なるほどです。ドイツではどんな受験準備をしましたか。
Y:ドイツに来てからは、午前語学学校、午後アトリエという生活を半年ほど続けました。その後は語学学校のみに通ってました。
語学学校は八ヶ月くらい行ったかな、大学入学半年前にはC1までいきました。
M:ベルリンに来ていつから大学受験を始めましたか。
Y:1月に渡独して、その年の春に受験しました。でもその時点ではドイツ語能力が足らなくて。(応募時点で一定のドイツ語レベルが求められる美大が多い。)そこでUdKはA2レベルでも受験できたのでMappeを提出しました。結局二次試験に進むことはなかったんですけど。
M:それから次の試験まで待つと。
Y:う〜ん、でも一年待つの長すぎたんだよね。アトリエなしで一人で受験準備しようと決めていたし、そんなに長期間自己管理をしっかりやっていけるのかという不安もありました。
来年の受験までに今のワーホリビザが切れるということもあり、もうコミックアーティストとしてやっていっても良いかなと思いました。
M:そして次にとったビザはアーティストビザ。
Y:そうです、大学準備ビザではなくて、アーティストビザにしました。
コミックのワークショップをベルリンで開いて実績を作ったり、コミックを描いて公開したりしてビザ申請の準備を進めました。
最終的に、三年のアーティストビザが取れました。
M:もう大学に行かないという決心をしたんですね、でも今は美大生。一体どういった心境の変化があったのですか。
Y:アーティストビザが取れてから、もう正直大学は良いやと思ってすっかりそのことは忘れていたんです。でもパートナーから
『やっぱり長い目で見て、ヨーロッパでコミックアーティストとしてやって行くんだったら、どこか大学を出ていた方がキャリアの上で強いし、そこで専門家とのコネクションもできるかもしれない。大学は行った方が良いよ。』
と言われて『受けるだけなら無料だし、前の受験の時のMappeもあるし。もう一度受験してみるか。』と気持ちが変わりました。
もちろん大学によっては受験料がかかるところもあるので全部無料ではないです笑
M:知らなかった〜〜!ナイス後押し。どこを受験したのですか。
Y:興味があったのはカッセルとハレとヴァイセンゼー、HAWです。
やっぱりベルリンを離れるのはいやだったからヴァイセンゼーを受けようと思ったのかな。でもこれはいつの間にか募集が終わってました笑。
HAWはハンブルクにある国立大学で、ドイツで唯一のイラストレーション学部があるんです。そこは多くのコミック作家を輩出していて、美大を出た後にここのイラストレーションをマスターで専攻する人も多いそうです。
でもここはSommersemesterからだったので、また入学まで待つのはな..と思いHAWは受験しませんでした。
ハレはドイツでは名のあるコミック作家が教授をしているし、街の空気になぜか懐かしさを感じたんですね。実は入試の時も「またここに来るな」と感じました。
M:私もハレを受験しましたが、まさかの行きのバスでyukaさんと一緒になったことを思い出しました…。受験の流れについても教えてください。
Y:まずはオンラインで応募しました。
ハレの受験は3日間あるので、2泊分宿を借りました。
1日目はMappeを提出するだけで終了しました。夕方に一次審査の結果が出ます。
2日目は一日中試験をしてました。3日目は面接があって終わりです。
M:試験中大変だったことはありますか。
Y:特になかったかな…。教授が課題の説明をしてくれたんですけど、ドイツ語での説明の後に『英語でも解説するからわからなかった人は前に聞きに来て』って言ってくれたんですね。やっぱり課題の内容はしっかり理解しておきたかったので毎回質問してました。
また、受験生同士もお互い助け合ってて。鉛筆忘れた子には自分のを貸してあげてたり、分からないところも教えあってたり。作品を褒めてくれる子もいました。
対抗心メラメラでお互いの足を引っ張り合うことは子供っぽいし、非効率的だとわかっている感じでしたね。
M:確かに私も試験中に、周りの人が丁寧に課題を説明し直してくれて感動した覚えがあります。ライバルというより、仲間でした。
Y:そうそう。あと、試験内容もとても楽しかった。面接の時に教授に『どうだった?』と聞かれて『めっちゃ面白かった!』と答えてしまったくらい笑。
面接での極意
M:それは最高。何か受験でのアドバイスはありますか。
Y:面接は緊張するとは思うけど、堂々と話した方がいいと思います。小難しいことをダラダラと喋るより、簡潔にズバッと答えた方が自分の考えがしっかり固まっているように見えますし。
ドイツ人の受験生がめちゃくちゃ長いこと喋って、教授たちもうんざりし始めてそれを感じた受験生が焦ってもっとダラダラと語ってしまう、という場面も見て。
M:ひい…。
Y:なんだか、ドイツ語ができるからこそ、喋れてしまうからこその弊害と言った感じでした。
教授もこちらがドイツ語をそんなに喋れないことは知っているんだから、引け目を感じずにはっきり堂々と喋って大丈夫。
M:外国人局とかレジの人の方が教授よりも数段怖かったんで、面接は逆に『教授やっさしいいいいい💫』て感動してました。
Y:知らないところで鍛えられていたのね☺️
M:はい☺️
また今日はここまで。
次回はyukaさんの通う美大の話について聞いていきたいと思います〜〜!!
それでは!