HornbachのCMから考えたこと ドイツで感じた差別について

すごく久しぶりの投稿はかなり重めの内容になりそうです。

ドイツでの差別について。

最近まで一時帰国してて、美味しいものたくさん食べて毎日楽しく過ごしてた私をズンと憂鬱にさせたのは、

Twitterに流れてきたHornbachのCM。

庭仕事をして汗だくになった白人男性の肌着を真空パックして、郵送し

灰色の街の自動販売機で販売、それを購入した女性が肌着の匂いを嗅ぎ

白目をむいて恍惚としたような表情をする、というとても気持ち悪いCM。

そして最後に『So reicht das Frühjahr. (春の香り)』の文字。

(あんなものここに載せて私のBlog汚したくないので、興味がある人はTwitterとかで調べてみてください。Hornbach CMとかですぐ出ると思う。)

そしてここで問題になっているのが

汗だくの白人男性の肌着を嗅いで、白目をむいてるのがアジア人女性であるということ。

真空パックのパッケージには『春の匂い』という日本語まで記されています。

ここで出てくる灰色の街は、架空の街だとHornbachは主張しますが、だったらなぜ日本の文字を使うのか。

女性の使用済み下着を売る自動販売機が日本にはあるらしくて、このCMはそれからインスピレーションを受けたと考えられています。

でも、なぜここでは消費者が日本人女性なの??

CMへの抗議に対して、Hornbachは

『このCMでは白人男性が消費される側である、だから女性を貶めている訳ではない、女性蔑視ではない。』とツイート。

コンセプト、理論ばかりが先行し、言葉が上滑りして

根本的、感覚的で絶対的なところがなおざりにされています。

CM撤回を求める署名や、批判の声がいかにたくさん集まろうと、

彼らHornbachは今でもこの悪意に満ちた人種差別的、男女差別的なCMを今も全国に垂れ流し続けています。

もしここでユダヤ人や黒人差別的なCMを流したら、もっと叩かれて
きっとHornbachは撤退に追い込まれるでしょう。

しかし、今もこうしてドイツがこのCMを流すのを許しているということは、
アジア人は別にバカにしてもいい存在、であると思われているからです。

現在のドイツでは。

悲しいことです。

ドイツはナチスのこともあり、人種差別には人一番敏感だと信じていた部分もあったので。

でも一方で『やっぱりな…』といった感情があるのも確かです。

もしかしたら、このCMを見た人は『これのどこが人種差別的なのだ?』となるかもしれません。

しかし、外国でアジア人として生きてきた人たち、特に女性はこのCMを見て

一瞬でHornbachの悪意、差別的な意識を感覚的に感じるのです。(そうでない人もいるかもしれません。主語が大きすぎました。)

通りすがりに『ハロー、中国人!』と言ってきたり(こんなの序の口)

電車内ではニヤニヤしながらこちらがいくら無視しても執拗に話しかけてきたり。最後にはキレて罵ってくることもあります。

白人女性にはしないことをアジア人女性には平気でしてくる人もいます。(スキンシップが激しかったり、まるで子供を相手にするかのように話してきたり。)

私が日本人女性だとわかると、『あなたたちは優しくて従順で好きだ』なんて日本を褒めているようにして結局ステレオタイプにはめ込んでくるやつとか。

他の人には親切な対応をとるのに、私の番だけブスッとしてお釣りも投げちゃうようなレジの人。(もちろんごく一部の人です。)

ただ機嫌が悪かった、とか外国人に慣れていないから、とかいろんな理由は考えられるけれど、長く住めば住むうちに『アジア人差別』はいやでも感じます。

『私は差別を受けたことは無い』という人もいます、もちろん。

でもこうして、差別を受けて苦しんでいる人がいるなら『自分はされたことないから』と知らんぷりするのは間違っている。

もしかしたらその人は『自分は他のアジア人とは違うから』なんてちょっと思ってるのかもしれないけれど。 大丈夫、あなたも同じアジア人です。

なんならみんな同じ人間のはずなのにな〜

アジア人差別には当初ほど絶望的な気持ちにはならなくなったけど、(慣れた)

それでも時々無性に悲しくなって苛立って、一人で外を歩きたくなくなるような日だってあります。

『差別してくる奴なんて、レベルの低い、かわいそうな人だから相手にするなよ』という言葉も散々聞いてきたし分かってはいるんですけど、でも言い返してやりたい気持ちも同じくらいあります。

でも大抵は、通りすがりとかに差別的な言葉を言い捨てていくのでとっさの反応ができない、とても悔しい。

ヘラヘラだらしないあいつらの顔をギョッとさせてやりたいと思うこともあるんですけどね。(これ言ったらマミー心配させるんだよね、)

差別されてからちょとキツいな〜っとなったのは

『もしかしてこの対応されたのは自分がアジア人だからじゃないか?』という選択肢がひとつ増えてしまったことです。

すごくネガティブだし、ときには言い訳のように使えそうな考えですが。

でも時々思ってしまうのですよね。

中国人の友達の夜に停留所でバスを待っていたのに二回も無視してバスが通り過ぎて行った話を聞いたときも

ドイツ人の女の子は『それは運転手が疲れてたんだよ』という隣で、黙ってしまう韓国人の女の子の複雑な表情とか。

本当に運転手が疲れてて、ミスしたのかもしれないし、暗くてよく見えなかったのかもしれないけれど『もしかしたら…?』と感じるこの嫌な気持ちは、きっと体験しないとわからないかもしれない。

まあ、『ハロー中国人!』くらいはもうどうってことないんですけどね。

不思議だったのはモロッコに旅行に行ったときになんども中国語で話しかけられたんですけど、同じことをされてドイツで感じるような苛立ちがなかったことです。

でもこれってある意味、彼ら(モロッコの売り子)に対する諦めなのかもしれない。それもそれで彼らを見下しているのかもしれない。

ドイツにきて、自分は『日本人だ』というよりも『アジア人だ』と思うようになりました。

韓国人も中国人もベトナム人も(もっともっと)いろんなアジアの人がいて、やはり彼らとは同じ空気をもっているなと感じることが多々あります。

そしてそれはとても安心感があり、心地よいことです。

日本では中国や韓国に敵対心を抱かせるようなニュース、彼らも日本を嫌っているのではないかと思わせるような報道がされることもあります。

それを鵜呑みにしてしまっている人もたくさんいます。

でも今までドイツで出会ってきた中国人、韓国人の人たちは 日本の文化も驚くほど知っているし、そしてとても優しく、いつも私を助けてくれます。

アジア人同士、苦労することもわかるしそしてなぜだかわからないけれど言葉にしなくても伝わるお互いの気持ちというか雰囲気。

このHornbachのCMについて一番最初に声をあげてくれたのは、韓国人の男性でした。

彼はCM撤廃、Hornbachの謝罪を求める署名を集め、直接Hornbachに抗議し、今もその活動を続けています。

『韓国の文化では下着を売って嗅ぐなんて文化はありません。これは日本だけがターゲットにされたCMです。』なんていくらでも言えるのに、こうして声をあげてくれているのは

私たちがアジア人、だからです。

そして私たちがこのCMの全面撤回、謝罪を求めるのは

このCMでさらに『アジア人女性(特に?日本人女性)は俺らの下着の匂いを嗅ぐのが好きなんだ』と勘違いする奴らが増えることは、現実として危険だからです。

ただでさえ、アジア人女性に対する偏見(たとえば、アジア人女性は白人男性を好む、とか性に奔放だ、とか彼らにとって都合がいいものばかしです。)があるこの欧州で、これ以上もう私たちに対する偏ったイメージを植え付けないでくれ!!

そして、危惧したとおりすでに実害は出始めています。

いきなり男性に『俺の下着の匂いを嗅ぐか?』と言われたり、クンクンと匂いを嗅ぐかのようなジェスチャーをされたりした、という報告も。

これはもちろん日本人女性だけではなく、他のアジア人女性もおなじ危険があるということです。見分けることなんてできないから。

もし変なことしてくるやつがいた時は

『楽しんでね、その匂い!(くせーけどな!!)』くらいは絶対言ってやろうと思って鼻息荒くしてます。

HornbachはDIYの会社らしく、購買層にはあまりアジア人女性は含まれていないそう、きっとそれを見越してのCM作製であったと思う。

ドルチェ・ガッバーナのデザイナーが中国をバカにしたときは上海のショーも中止され、最後には中国のマーケットからドルチェ・ガッバーナは姿を消した。

このCMが流されてもそのままにされるようだったら、きっと

やっぱり、アジア人はバカにしても大丈夫だ。』という認識も変わらないでしょう、そしてこの差別はもっとひどいことになっていくかもしれません。

それを食い止めるためにも、私は絶対このCMを許さない。

ニヤニヤ見てきたり、『チンチュンチャン』と言ってきたりする人たちにはもう何も感じない(うそ、時々めちゃムカつく)のですが、このCMを見たときに感じたのは

『やっぱりな..』という既視感にも似た感情。

あからさまに差別してこないけれど、なんとなく時々感じてきた

うっすらと根底に流れるドイツ人のアジアに対する軽視。

もちろん、そういうのが全くない人もいるし、私の周りにその感情がない人の方が多いと思います。

でも今まで気づかないふりをしてきた、自分の気のせいではないかなと思うことにしていたのですが(だって大抵の人はそれでも親切だから。それなのに、((実は私のことバカにしてるよね?))って思うのかなりキツいじゃん。自分の心が)

このCMを放映し続けることを許すドイツ社会を見て、もう知らないふりをするのはやめようと思いました。

今すごく被害者ヅラして書いてますけど、私だって知らずに差別をしていることだってあるだろうし、(悪気のない差別が一番手強い)

男女差別、外国人差別でいったら日本なんて全く人のこと言えたもんじゃありません。

むしろドイツよりひどいと思うこともあるし、それに関しては後進国だなと感じることも多々あります。

その点、ドイツはナチスでの過ちを認め、反省し、それを行動に移してきた国だと尊敬していたので、今回のことですごく失望したのかもしれません。

裏切られた気持ちというか、あからさまに向けられた悪意に心がえぐられるというか、

『差別がそんなに嫌なら、日本にいとけばいいじゃん』なんて意見もあるかもしれませんが、

今の時代、なにそんな後進的なこと言ってんだ????という感じです。

差別だと思ったら、声をあげて毅然と立ち向かっていく。

差別された苛立ちと悲しさは相手を憎むのではなく、抗議するエネルギーに変えていこうと決めました。

ドイツにきて、差別的な行動よりも『やっさしい〜!』とびっくりするようなことの方が多かったりするけれど、今回は我慢ならずに書きました。

HornbachのCMを見て、自分も何か行動に移したいと思った方、

CMの撤回を求める署名のリンクはこちらです。

またtwitterでは#ich_wurde_geHORNBACHt (私はHornbachされた、差別された、の意)のタグで抗議の声が挙がっています。

またDeutcher Werberatに連絡して、CMが適切かどうか審査、取り下げを命じてもらうこともできます。

ここではドイツ語でCMについて説明する必要があります。

そして今また新たな動きとして#1000Absagen   (1000度のお断り)が始まっています。



差別については本当に人それぞれの捉え方があるし、ナイーブな問題で話す時も気を使うものですが、今回は書かなければならないと思いました。

この記事がドイツに住んでいる人以外にも届けばいいなと思います。

ここまで読んでくれてありがとうございました。

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