あご

この夏休みはひたすら静かに過ごしている。ある日思い立って、いきなり髪の毛をオレンジ色にしたくらい。

夏休みが終わるまで、あと一ヶ月以上はあるんだけど(これを言ったら大抵の人は目を見開いてびっくりする。そして必ず続いて「いつから夏休みはじまったの?」と聞く。7月中旬からです、となぜか若干の誇らしさといたたまれなさを感じながら答える)それまで特に予定もない。

「この夏は何もしなかった」とインドに出かけた友達に言ったら、「ふ〜ん」とつまらなさそうに返事された。

めげずに「でも、夏休み前がほんとにきつかったからこの平凡な日々が幸せ」と続けたけど、ガンジス川から顔出した友達は鼻ゴシゴシふきながら「ふ〜ん」と目をそらして、また潜っていった。

実際、オーストリアに行ったり、オランダに行ったり、鶏肉を焼いてたらふく食べたりはしているんだけどずっと(何もしてないな)って思っている。きっと何してもこの夏休みはそうなのかもしれない。イスタンブールに飛ぶつもりだったけど、お金もないのでやめてしまった。

夏は実際10日くらい前にふっと消えてしまった。八月下旬になると、暗くなるのが早くなって風の温度がだんだんと冷たくなっていたので、終わりの予感は皆感じていたと思う。

「学校に行きたくない」「あの人は、他の人も遊びに誘っている、私だけではなかったんだ」「自分の言いたいことが何も言えない」そういうたくさんのきつい感情に包まれた夢を見ていたら、友達に足の裏をくすぐられて目が覚めた。

いつもの私からしたらまだ早い時間だったけど、夢から体を引き剥がすみたいにして起きた。「うつ伏せに寝てると苦しいよ」と友達に言われるんだけど、私はそれがくせになってるんだよな。

オレンジ色の絨毯の部屋に引っ越せたんだ、嬉しい。カーペットじゃなくてふわふわの柔らかい絨毯。朝になると陽の光も入るよ。今まで住んだ部屋で一番狭い部屋だけど、一番居心地がいい。私は新しい部屋に住むたびに「ここが一番素晴らしい」と思う。引っ越すのはいつもやむを得ない事情があるんだけど、そのタイミングでしかこの部屋に住めなかったんだと思うと、大変だった部屋探しもlohnt sichに思えてくる。

この部屋に前住んでいた人たちが残していった造花、白黒の馬の写真もある。全て私の趣味ではないものたち。空白だった金色の額縁には、さっきakikoさんの絵を入れた。オーストリアで買ってきたHundertwasserの絵葉書も壁に貼り付けた。この絵葉書は美術館のショップで48枚くらいある中から努力して10枚だけ選んだものたちだ。一枚も欠けてはならないくらい好きだし、宝物みたいに思っているんだけど、毎週土曜に家にやってくる女の子にはこの中から一枚だけあげようかなって思っている。

オーストリアのお土産で妹にウエハースも買っていったんだけど、彼女は「これ、ドイツのスーパーでも買えるじゃん」と笑いました。すっかり忘れていた、私はバニラ味が好きではないけど、3つ買ったウエハースのうち3つともバニラ味です。なぜならバニラの花の絵が描かれた包み紙が可愛かったから。いつも、お土産に買うお菓子は味よりパッケージを重視する。

寝ている間に小さいニキビがあごにできていた。すでに乾燥してカピカピになっているのでちぎってしまった、血が出る。ティッシュを当てたら、赤ダニみたいな小さい丸がつく。意外とずっと出る血、舐めてみたら少し遅れて鉄の味がする。小学校の階段は鉄でできていた。手すりにベロ〜っと舌を這わせながら階段を降ったこともある。しょっぱくて、確かに血の味がした。「手のひらの味だ」と思った。(手すり利用者には、本当に申し訳なかったと思っている。)

赤鉛筆を舐めて、親指を赤く塗り、紙に押し付けると、くっきりと指紋をうつすことができる。それみた同級生の女の子が、「私もやってみたい!教えて!」というので喜んでその子の赤鉛筆を口に含んだら「うえっ!!」と叫んで逃げられた。これも小学生の時の話。

明日から友達が家に泊まりに来る、たのしみ。一緒に詩集を作りたい。

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