他の大学に行ってみようの巻

ロックダウンで大学の工房も使えない中、自宅でなんとか制作できるものはないか…と模索していたときに出会ったのが陶芸。大学では数時間の陶器ワークショップもあったが、そこまで真剣に取り組んでいたわけではなかった。陶芸よりもガラス作りの方が当時は夢中だったから。

しかし家でガラスが吹けるわけでもないので、粘土で花瓶を作り始めた。近所の画材屋から10キロのTonを買って来て、街のいろんな陶芸工房にメールを送っては焼いてもらい、釉薬を試しては失敗してを繰り返し、しばらくすると材料費だけがかさんで赤字になり、部屋は大量の花瓶に占領されて足の踏み場もなくなってきた。

ということで自分の作ったものを売り始めた。最初は友達や知り合いが買ってくれて、インスタを開設したら知らない人も購入してくれるようになった。インターン先ではクリエイターとしての心構えから値段設定の仕方までたくさんのことを教わり、それらを実践していたら「セラミストとしてやっていく将来」もここ最近はうっすら見え始めてきている。

プロダクトデザインを専攻として選んだ理由は具体的にいうと『自分が作った雑貨や家具に囲まれた店を開いて、カフェも一緒にやりたい』からだ。そのためには、様々なマテリアルや加工方法、ものの作りかたを学びたいと思っていた。

しかし実際に何年か勉強してみたものの、プロダクトデザインは性に合わない気がしている。クラスメートと話していても、彼らは本当にプロダクトデザインが好きなのだなと分かるし、自分はずっと場違いな気がしていた。教授も私の持ってきたコンセプトをなんとかプロダクトデザインの枠にはめようと努力してくれていたし、私もそれに沿ってなんとか”プロダクトデザインっぽく”やってきた。しかし….つまらない。

ここら辺で、『自分がやりたいのはアート方面なのでは?』という疑問も浮かんできてはいたが、やっぱりそれも違う気がする。そんな中始めたインターンで、Functional Artというものを知った。インターン先はベルリンのデザイン兼制作スタジオで、建築を学んだ夫婦がデザインした家具やテーブルウェアを自分たちの手で作っているところだ。

「Functional Artっていうのはアート業界からもデザイン業界からもクソだって言われてるけど、でもこの分野はこれから面白いことになっていくと思う。ドイツもBauhausでいいスタートを切ったとは思うんだけどなぁ…」と上司が言うのを聞きながら(自分がやっていきたいのはこれなのかもしれん)と私は思っていた。

話を戻す。

花瓶が誰かの手に渡っていくのは楽しかったし、今までにない高揚感があった。
プロダクトデザインを学んでいたのは無駄ではなかったのだなと思えたし。
しかし、だんだんとまた飽きてきた自分にも気づいていた。同じ型の花瓶を何個も作り、心を無にして釉薬を何時間も塗り、気が狂ったかのような頑丈な梱包をして送り出す。
以前は自分の好きなままに、一個だけの花瓶を作って、失敗しては窯の人に解決策を聞いてみたりし、釉薬のカタログをめくってはワクワクしたりしていた。私にはまだたくさんやりたいことがあると気づいた。このままではあと一年くらいで尽きてしまうと思った。自分はこれからも陶芸がやっていきたいのかもわからなかった。

うちの大学では陶芸を極めるのはむずかしそうだったので、他の大学に潜り込んでみるのが良さそうだと思った。Keramik で検索すると何校か出てくる。
といっても数はそんなにないから調べ始めて5分くらいでここかな〜という目星はついた。
見つけた大学にはプロダクトデザイン学部のKeramik科とアート学部のKeramik科があった。はじめにちらっとアートの方を見てみた。

みんな好き勝手に何とも形容しがたい形あるものをたくさん作って並べた写真を眺めて、(すごく楽しそうだな〜)と思った。羨望に近いものだったと思う。
でもすぐに(いや、私ができるわけないや)とタブを閉じてプロダクトデザインのKeramikのページを開いた。安心感と既視感のあるものたちが並ぶ。おかえり〜って言われてるような気持ちになりながら、でもわざわざ違う大学に行くのに同じことをしてどうすんだ⁉︎とも思った。そしてまたKeramik Kunstのページを開く。(ここに足を踏み入れられたらどんなにいいか…いやしかし、やっていけるのか?)



なぜかわからないけれど、Kunstの世界に入って行くことに戸惑いがあった。そこに行きたいことは分かっているのに、不安の方が勝る。でもどうせなら挑戦してみてもいいかもしれない。いつもお世話になっているプロダクトデザインの教授にメールで聞いてみた。

そしたら『Kunst Keramikで好きなようにやってみるのはあなたに合ってると思うよ〜。行ってみれば?』とのこと。あっさりとした答えに拍子抜けした。私のプロジェクトを一番側で見てきた彼女が言うなら間違いないだろう。いざ、いってみよう!


すごく迷ったみたいな書き方になっているかもしれないが、実際決断にかかった時間は半日くらい。パンデミックになってからいまいちパッとしない毎日を過ごしていたが、Gast Semesterをやると決めたときが一番心高鳴った。面白いことをずっとしたかったんだな。まあ私がやりたいと思っても、相手が受け入れてくれるかはわからない。まずはKeramik Kunstの教授にメールを打つことから始めた。

(続く)

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