今日は一日中移動になることがわかっていたので、時間はなかったけれどギリギリまで朝ごはんを食べる。
「今日は1日エッサウィラでゆっくりするぞ〜」ってできたらどんなにいいことか…と名残惜しく海を眺めながらの食事。
Supratoursのバス停までスーツケースをガラガラ引きながら行く。
今回はCTMではなくてSupratoursを利用。
皆、予約席にちゃんと座っていたので助かった。
マラケシュ駅には12時半についた。
フェズ行きの電車は14時に出発する、それまで時間があるので友達は近くのCTMで明日に使うバスチケットを買いに行った。
友達を待っている間に、KIOSKで飲み物とお菓子を買う。レジ打ちをモロッコで初めて見て、なぜか安心感を覚える。
Macでお昼ご飯を食べて、やってきた電車に乗り込む。
予約していた席は離れていたけれど、誰か来るまでいいだろ、と三人で一緒に座っていた。
隣のモロッコ人の青年に何かのあったかいパンをもらう。肉団子入りの今まで食べたことない味だった。そこらへんに座っている人たちみんなで回し喰いをする。ここで正露丸を飲むという無粋な行動は慎んだ。
トイレに行った友達が興奮気味に帰ってきた。
「見てきなよ、死が直ぐそばにあるぜ」ってさ。友達はいつもそういう言い方をする。へっ、なんて思いながら見に行ったらポカンと闇が口を開けていた。
トイレのすぐそばのドアが完全に開ききってて、外の景色がゴーッという音ともに流れていくのが直で、見えた。
こりゃ、トイレにこもってる間にドアが開いちゃって、トイレから出て少しでも右によろけたりでもしたら…確かにすぐそばに死。
旅も後半になり、長い移動時間も手伝って、三人で初めて小さな喧嘩をした。友達と妹がまさか口論するとは、旅のはじめには思ってもなかったので、二人に挟まれて私は少し笑ってしまった。私は真剣な時に笑ってしまう、気まずい癖がある。きっと緊張をほぐそうと、体が無理やり笑わせているんだよ。三人でモロッコに来て本当によかったなと思った。友達はイライラしたら、大音量でロックを聞くんだって。
車掌さんが
台車をコインでティティッティティティティティと叩きながらやってくる。
友達と妹がカップケーキとポテトチップスを買った。車掌さんはドキドキしていて、親切で、お釣りも丁寧に渡した。そして再び、台車の取っ手をリズミカルに弾きながら去って行く。
最後の最後に男と派手な女が二人乗ってきて、あたりかまわず甘ったるい匂いを撒き散らして気まずかった。
男がチャイナ!って言ってきてシカトしてたら、男は私たちにプリングルスをくれた、食べなかったけど。
女が歌い始めた。こちらを見つめながら体を揺らす、うねる黒髪。一緒に歌えばよかったな、やけくそ。
私の隣に座っていたおじさんはそんな二人に目もくれず、ひたすら本を読んでいた。
フェズにやっと着いた、エッサウィラより都会で運転手も陽気で声も大きく、(この人は本当に声が大きかった。)
そして運転も荒い。
ナビがあるはずのところに、小さなテレビがくくりつけれられていて
紫の背景に男が弦楽器を抱えた絵が写っていた。流れる曲と一緒に歌う運転手の男。
明日シャウエンにバスで行くことを伝えたら、「危ないよ、山のグネグネ道を通るから。事故で死んだ人もいる。それよりタクシーで行った方がいいさ。俺が運転してやるよ」と言われた。値段はバスよりだいぶするが、命に代わるものはないさ、と。
それを聞きながら、窓の外を見てると(ちょっとモロッコに疲れてきたかな、)と自信がなくなってきた。街から街へと移動して行く毎日にも。
リヤドにつくと、思ってもいなかったいいお知らせが。
部屋を、値段も変えずにアップグレードできるということだ。
リヤドのお兄さんに日本人は優しくて、シャイで、好きだ、と言われてへへへへっへへと笑うしかないうちら、マジでしゃいだった。
少し離れたリヤドへ移動する。プールがついているだけで自動的に(ここはお高いところや)と判断する私の脳みそ。
今までとは数段違って豪華だったし、お通しのお菓子もなんだか美味しい気がした。するとやって来た敏腕社長といった感じの男が対応してくれる。スーツをきちっと着こなし、見るからに余裕のありそうな雰囲気。
そして通された部屋が本当に豪華、ここで一泊しかしないのが非常に残念。
自分の疲れた気持ちを見透かした誰かさんが、この部屋を用意してくれたのかな。
しかも支払いは明日だという。新手の詐欺ではないかと疑ってしまい心から喜ぶことができない私たち。
「Booking.comの口コミでは、アップグレード詐欺の報告はないようだね」とスマホから顔をあげた友達が言う。
皆一抹の不安を抱えた表情でベットに寝転ぶ。
ふかふかに包まれて、「ま、いいか」と思った。
テレビではインドドラマが放映されていた、カメラワークが独特であった。反復して拡大されるヒロインの泣き顔、言葉はわからなくても今は修羅場だというのは伝わって来る。
夕ご飯を食べに行く気も起きず、結局そのまま寝た。